魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
「成り行きでな」
「あれはタイミングが悪かったのよ。そもそも黙って姿を消すヴィオが悪い」

 二人の回答に「そうかそうか」と頷きながらテーブルにつくユリウス。ヴィオルドが過去を話したことは予想外であった。

 そこへヴィオルドが思い出したように口を開く。

「そういえばドルークがお前のこと探してたぞ」
「あっ、一緒に探してたの忘れてた! ごめんよ、ドルーク」

 ミーナは明日ドルークに謝りに行こうと考える。お菓子の一つでも持っていくかな。そんな彼女の思考をユリウスの一言が見事なまでに途切れさせた。

「ヴィオルド、今日はうちに泊まっていくかい? 寝られなかったら、また昔みたいにホットミルクを出そう」
「反対反対! さっさと帰りな!」

 ヴィオルドに返事の隙を与えず反対する。政治活動家のように右手をまっすぐあげて反論を訴える。しかしそれが本心でないことに彼女自身が驚いていた。そう、本当は帰ってほしくなかったのだ。ミーナはそれを認めまいと反対を連呼する。

 彼女の本心など知らずに恩人であるユリウスの提案に乗ることを決めるヴィオルド。彼女の意見などお構いなしに、自分の決定を述べる。

「ユリウスさんに言われたら、泊まるしかないだろ」
「部屋は前のままにしてあるよ、ちょっと掃除がいるかもね。ミーナ、隣に鍵かかってるでしょ? これで開くから軽く埃はらってきて」
「……わかったわよ」

 しぶしぶ言うことを聞いているように振る舞っているが、ミーナは浮かれて踊り出したい気分だった。そんなことないはずなのに、と冷静に言い聞かせる。

 一体どうしてしまったのだろう。彼女は動揺を誤魔化し、ユリウスから鍵を受け取ってすぐに階段を駆け上がっていった。

 ヴィオルドは国を出てから衛兵になるまで、ユリウスの世話になっていたのだ。それからはこの店がヴィオルドの家のような場所。店の二階に住んでいたのは彼女だけではなかった。鍵をかけっぱなしの物置だとずっと思っていたミーナの部屋の隣こそ、ヴィオルドがかつて住んでいた部屋だった。
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