魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
 ミーナは仄かな明かりに照らされながら静かにミルクを飲むヴィオルドを盗み見た。本人を目の前にして彼の生い立ちを考えると、さっきまでの言動に一喜一憂していたのが馬鹿みたいに思えてならない。何を一人で浮かれていたのだろう。

 そこで彼女は思い出した。自分のことを詮索されることがどれ程いやであったかを。

 魔法が上手く使えず劣等感を感じていたときは、家のことを知られるのが怖かった。彼女の場合、嘲笑されるか、うわべだけの同情をされるかのどちらかだと思っていたからだ。ヴィオルドの場合は抱えているものの重みが違った。それはミーナの想像を遥かに絶するもので、軽い気持ちで聞き出して良いことではない。

 勇気を出して、彼女は沈黙を破る。ヴィオルドの方をしっかりと見ながら、恐る恐る言葉を紡いだ。

「…………今日はさ、偶然とはいえ無理に聞いてごめん。私だって前までは家のこと詮索されたくなかったし、その気持ち忘れてた」
「さっきも言ったが、その辺はお互い様だ。俺だってミーナからエルテブールに来た理由を聞き出しただろう」

 カップに視線を落としたまま答えるヴィオルドは、冷静な声音で返事した。湿った髪から静かに水滴が落ちる。

「そうだけど……でも、私とヴィオじゃことの大きさが違うじゃない」
「本人が隠していたことに大きいも小さいも関係ねぇよ」

 助けたい相手にフォローされてしまう。なんだか自分が情けなく感じてしまう。

 ベッドに面した壁にある窓が空いていたようで、二人のあいだを夜風が吹き抜ける。薄い生地のカーテンが揺れ、影を動かした。夜も深まり、空気は少し冷えてきている。いつの間にかミルクもぬるくなっていた。

「ちょっと肌寒いね。私ナイトガウン取ってくる」
「これ着てればいい」

 ヴィオルドはミーナより前に立ち上がり、カップを机に置く。椅子に掛けられた上着を軽く投げた。そのまま窓を閉める。

 サイドテーブルにカップを置いて、両手でキャッチする。予想外のことにキョトンとした顔でお礼を言う。

「あ、ありがとう」
< 53 / 88 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop