魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
ミーナはヴィオルドから受け取った上着を肩に羽織った。彼女にはサイズが大きくて、袖や肩の部分が余ってしまう。いつも自分が身につけているものとは違う匂いがして、意識すると胸の鼓動が早くなってしまった。心のなかで自分に「落ち着け」と繰り返し言い聞かせる。
ヴィオルドはというと、何も気にしていない。何もなかったように、カップを持って再びミーナの横に座る。ただそこに上着があり移動をしなくて済むからという、この上なく合理的な手段を選んだにすぎない、そう言っているようだ。
彼女はそんなことを考えていたら、ヴィオルドがぽつりと呟いた。どこか遠くを見ている顔で、手に持ったカップを眺めている。
「……俺はさ、お前がうらやましかった。お前は逆だったんだろうけど」
「そうだったの……全然気づかなかった」
少し驚き気味に言葉を漏らす。かつての彼女は自分のことで精一杯で、ヴィオルドの事情なんて考えもしなかった。今思い返すと、恥ずかしく感じる。人が抱えている事情なんて、世界に存在する人の数ほど存在するのだ。
ヴィオルドは視線を上げ、思い出したように口を開いた。
「フィルと、仕事のあと話してから来たんだ」
「そう……」
「ミーナになら話しても大丈夫じゃないかと言ってたな。あいつは周りが男ばかりだから、初めてお前と会ったときも女友達ができて喜んでた」
ミーナはわずかに自分の心が曇っていくのを感じる。彼女が待っているあいだ、彼はフィルと話していたのだ。それくらい当たり前のことなのに、なぜか気になってしまう。彼女は自分のなかにある正体不明の――察しはついているが自覚したくなくて認識を放棄した――感情を追いやろうとする。
しかしやはりヴィオルドの口からフィルの名前を聞くと、どうしても動揺してしまう。ミーナにとってもフィルは数少ない同年代の女友達のはずなのに。
ヴィオルドはというと、何も気にしていない。何もなかったように、カップを持って再びミーナの横に座る。ただそこに上着があり移動をしなくて済むからという、この上なく合理的な手段を選んだにすぎない、そう言っているようだ。
彼女はそんなことを考えていたら、ヴィオルドがぽつりと呟いた。どこか遠くを見ている顔で、手に持ったカップを眺めている。
「……俺はさ、お前がうらやましかった。お前は逆だったんだろうけど」
「そうだったの……全然気づかなかった」
少し驚き気味に言葉を漏らす。かつての彼女は自分のことで精一杯で、ヴィオルドの事情なんて考えもしなかった。今思い返すと、恥ずかしく感じる。人が抱えている事情なんて、世界に存在する人の数ほど存在するのだ。
ヴィオルドは視線を上げ、思い出したように口を開いた。
「フィルと、仕事のあと話してから来たんだ」
「そう……」
「ミーナになら話しても大丈夫じゃないかと言ってたな。あいつは周りが男ばかりだから、初めてお前と会ったときも女友達ができて喜んでた」
ミーナはわずかに自分の心が曇っていくのを感じる。彼女が待っているあいだ、彼はフィルと話していたのだ。それくらい当たり前のことなのに、なぜか気になってしまう。彼女は自分のなかにある正体不明の――察しはついているが自覚したくなくて認識を放棄した――感情を追いやろうとする。
しかしやはりヴィオルドの口からフィルの名前を聞くと、どうしても動揺してしまう。ミーナにとってもフィルは数少ない同年代の女友達のはずなのに。