魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
七章
 それは陽気な昼下がりのこと。暖かい陽射しが窓から射し込み、光の道を作りながら店内に日だまりを描く。

 客の少ない店内でミーナがテーブルを拭いていると、レネがスカートをふわりとなびかせながら勢いよく店に入ってきた。後を追うようにアデライドも続けて入ってくる。

 二人は彼女が拭いているテーブルにつき、ミーナやユリウスと挨拶を交わしてメニューを開いた。

「ボクはチキンのサンドイッチとココアで!」
「私はエッグトーストとカフェオレを頂きたい」

 二人の注文をメモに綴り、注文を繰り返して確認したミーナはユリウスがいるキッチンカウンターへ足を運ぶ。彼女はメモを置いて、すぐに二人のいるテーブルへ引き返した。

 そこでミーナはレネが店内に現れたときから感じていた、かすかな違和感の正体に気づく。

「レネ、少し身長伸びた?」
「あ、わかった? ほら、ボクの身長ミーナと同じくらいじゃない?」

 そう言ってレネは立ち上がりミーナの横に並んだ。この前まで彼女より低かった身長は、いつの間にかミーナに追いついていた。ドレスの裾が足りなくなってきており、以前より短く見える。

 二人を見比べて、アデライドは感想を漏らした。

「ミーナが抜かされるのも時間の問題だな。私の身長もいずれ追い越すだろう」

 その後も客が増えることがなかったので、彼女はレネやアデライドと他愛ない会話を楽しんでいた。

 二人はエルテブールに来て最初にできた友達であり、ヴィオルドへの恋愛感情を持つ前のミーナのことをよく知っている。それゆえ、この二人と話していれば自覚する前の思考回路を取り戻せるかもしれない。自分が忘れてしまった部分を思い出せるかもしれない。そんな淡い期待を抱いていた。

 そうなれば、フィルへの嫉妬なんて醜いものをかかえなくて済むから。

 しかし恋愛感情というのはそう簡単に出たり消えたりするものではない。こんな風にヴィオルドとも言葉を交わしたい、彼に会いたい。そんな思いばかりが胸のうちに広がっていく。この感情から目を背けることはできない。
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