魔法の使い方２　恋のライバル、現る！？
「そういえば、お名前を聞いてなかったわね。なんて云うのかしらぁ？」
「ミーナ・マグノリア」
「そう。魔法の名家出身だったのねぇ」

　なぜそんな家の娘が軽食屋で働いているのかという疑問を孕んだ声の調子だった。ミーナはそれに応えることなく、メニューに視線を落とす。

　疑問を持たれることを承知の上で、彼女はエルシニアに苗字を名乗りたいと感じていた。かつてミーナを見下していた彼女に、本当の身分を知ってほしかったのだろうか。


　ミーナがケーキを注文し、それが運ばれてくる頃にはエルシニアと互いに近況報告をしていた。最初ぎこちなかったが、次第に慣れていきお互い余裕が生まれた。ヴィオルド達が注文を終える頃、ミーナとエルシニアは会話を楽しめるようになっていた。

「え、なんであいつら仲良さげなの？」

　詳しい経緯を知らないヴィオルドは手を止めて、不思議そうにミーナ達を見つめる。彼の一言で、フィルとドルークもつられてヴィオルドの視線を追った。エルシニアの容姿を知らないフィルは、不思議そうな声音でヴィオルドに尋ねる。

「ミーナと、……誰ですか？」
「前話したエルシニア嬢だ」

　ヴィオルドは自分の目を疑いながら、彼自身も事実を確認するように返事した。動揺を隠せていない。

　話だけ聞いていたフィルは、自覚してやっと事態を飲み込む。もう少しで飛び上がるところだった。ドルークも目を見開いて、この世にないものを見つけた表情をしている。

「何でミーナさんとあのお嬢さん、仲良いんすか？」
「俺が知りてぇよ……」

　三人が全員驚いて固まっている中、一番最初に行動を起こしたのはフィルだ。弾かれたように席を立つと、ミーナとエルシニアがいるテーブルへためらいなく一目散に向かう。残された男二人は状況を理解できず、間抜けに口を開けているだけ。
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