魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
「こんにちはミーナ! ……とエルシニアさんですよね?」
「ええ、エルシニア・エンテロコリティカですわ」
「フィル! 最近お互い都合がつかず会えなかったわね! 元気だった?」

 そう返しながらミーナは少し心が痛んだ。会いに行くタイミングはあったが、嫉妬心と罪悪感が入り混じり一人で気まずさを感じていたのと、それを見抜かれるのが怖くて行けなかった。

 それを知らないフィルは無邪気な笑顔で答えながら、エルシニアに話をふる。

「もちろん! エルシニアさんは最近めっきり噂になりませんでしたが、今はどうされているのですか?」
「随分ストレートな娘ねぇ、嫌いじゃないわ。不動産の勉強よ」

 貴族は土地を多く持っており、その資産運用能力が問われる。上手くいかなければ没落し、財産と爵位を失うことになる。そのため専門家を雇ったり、有能な執事に任せたりしている家も少なくはない。

 とはいえほとんどの貴族が持っている不動産は安定しており、形式上の仕事であることが多い。

「あたくしには何もないって気づいたから。知識はいいわぁ。こちらが忘れない限り、ずっとあたくしについていてくれる」
「そっかー、そうですね! あたしも自分の技術は大事にしたい! 申し遅れました、あたしはヴィオルドの下っ端やってるフィルです」

 フィルが和気あいあいと会話に交ざったのを見た男性陣は、決断に迫られていた。あのよくわからない輪の中に飛び込むか否か。しかしフィルをあのまま放っておく訳にもいかない。

 遂にヴィオルドは意を決して重い腰を上げる。取り残されそうになったドルークも続いて席を移動する。

「お久しぶりです、エルシニア嬢」
「待ってくださいよ先輩! あ、こんにちはエルシニア嬢さん。よくヴィオルドに同行してるドルークです」

 エルシニアは「あら、お久しゅう」と動揺することなく、その他大勢に話しかけるのと同じ調子でヴィオルド達に挨拶を返した。

 反対に、ミーナは予期しない遭遇に軽く動揺した。嬉しくもあるが、フィルやエルシニアがいる中では気が乗らない。

 彼女は誰にも動揺を悟られないよう、言葉を選んで挨拶する。なるべく不自然にならない言葉を並べようとするが、考えることにより何が自然だったのか余計にわからなくなってしまう。

「ドルーク、ヴィオ、しばらく会えなかったわね。薬はどう?」
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