魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
 それでもなんとか当たり障りのない言葉を並べ、この場を切り抜ける。

「ああ、助かった。よく効いてるよ」
「そう、……薬がきれたらまたいらっしゃい」

 来てほしいというミーナの意思が露呈しないように、彼女は薬の部分を強調した。それが今の精一杯だ。

 エルシニアは思いの外丸くなっていて、ヴィオルドやドルークとも普通に会話することができていた。

 城下での流行りや天気の話、最近の出来事について話していれば、あっという間に時は流れていた。フィルは懐中時計を見て声をあげる。

「あ! あたしそろそろ見習いに戻らないと! お会計置いてきますね!」

 そう早口で言うと、財布からお金を出しテーブルに置いて走り去っていった。人混みに紛れ、彼女の姿は次第に見えなくなる。

 その様子を見届けたエルシニアはヴィオルドの方を見て口を開いた。緑の瞳は真っ直ぐ彼を見ている。

「あたくし、アナタに謝るわ。たくさん迷惑をかけたでしょうに。……ごめんなさい」

 形だけのものではなく、煽りでもなく、心からの謝罪だ。エルシニアはかつての過ちを恥じている、そんな表情をしていた。

「こうして謝罪も戴けましたし、もう気にしていません」

 紳士的な態度を取るヴィオルド。ミーナは彼の優しげな対応を見ても、やはり何も感じなかった。正しくは、フィルに対してのような感情は抱かなかった。

 それはフィルがヴィオルドにとって特別な存在であるかのように、ミーナの目に映るからだろう。

「俺達もそろそろお暇します」
「お嬢さんお元気で!」

 警備隊の人達が去っていくのを確認したあと、エルシニアは真剣な表情でミーナに向き直った。

「ミーナにも謝るわ。失礼なことばかり言いましたもの。……ごめんなさい」
「もういいのよ、気にしないで」

 ミーナは手を振って気にしていないことを身振りで伝える。そんな彼女の様子を見ながら、エルシニアは神妙な面持ちで更に口を開いた。

「アナタ、ヴィオルドのこと好きなのでしょう?」
「えっ」

 突然の質問にミーナは固まり、沈黙が二人の間を襲う。周りの席からは楽しそうな談笑が聞こえてくるが、二人の席だけはそこだけ切り取られたように無言の空間になっていた。
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