魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
「…………な、なんでそう、お、思った……のかな?」

 ミーナが固まって動かない口を無理やり動かして絞り出した返答がこれだった。否定するのでなく、質問に質問を返す形。肯定しているようなものである。

 彼女のわかりやすい動揺を見たエルシニアは勝利の微笑を称え、ミーナの問いに丁寧に答えることにした。

「ヴィオルドが現れたとき、アナタは動揺してたわ。必死に隠していたみたいだけどぉ? あの三人には、誤魔化せたみたいねぇ」

 彼女の顔がしまったという表情になるのをちらりと見ながら、エルシニアは続ける。

「『ドルーク、ヴィオルド』と言っていたわね。一番目に言わないことで興味ないと思わせたかったのかしらぁ?」

 そこも読まれていたのかと、ミーナは目を見開いて絶句する。彼女の顔は真っ白だ。

 エルシニアは気にせず、追い討ちをかけるように更に続けた。

「そしてフィル、あの娘は彼と親しいみたいねぇ。アナタすごく彼女を気にしていたし、帰ったあとホッとしているように見えたわ」

 そんなところまで見られていたのかと、彼女の顔はいよいよ蒼い。

 ミーナの様子を見ながらエルシニアは大袈裟に同情するそぶりを見せながら、芝居がかった調子で呟く。

「賢いって哀れねぇ。考えてしまうもの。けれど今はあまり頭が回ってないわねぇ。それでも思考は止まらない」
「うっ……」
「嫉妬心に気づきながらも醜さを知っているから必死に消そうとする。自己嫌悪に陥り、考えるせいで独りよがりな気まずさが加速する」
「なんでわかるの……」

 エルシニアの言葉は的を射ていた。まるで彼女の心の内をずっと見てきたかのようである。必死に隠してきたのに。誰にもバレなかったのに。

 彼女は朱い髪を耳にかけながら、ミーナの質問に律儀に答える。

「顔に書いてあるわよ?」
「え……」

 そう言われて自分の顔をペタペタと触る。もちろん何もない。不思議そうな表情をするミーナに、彼女は語り始めた。

「ミーナがきっかけをくれたのよ?」

 ミーナとの接触で自分を見つめ直すことになったエルシニアは、必然的に周りにも目を向けていた。言葉や仕草から相手の考えを読み取ろうとしていたら、いつしか優れた観察眼を持つようになっていた。
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