魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
「……それで、まぁアナタの嫉妬に対する嫌悪は、あたくしも原因の一つだと思うわ。迷惑かけたでしょうから」
「そんなこと……」
「あの頃のあたくしは見苦しかったわぁ。ミーナはきっと『こんな風になりたくない』と強く思ってたはずよぉ?」

 ミーナは無言になる。否定しないという肯定だ。思い返してみれば、彼女はフィルへの嫉妬から生まれた違和感を最初は認めまいとしていた。自分にそんな感情があると知りたくなかったのだろう。

 そして王都に来るまで、人との交流が少なかった。最初に目の当たりにした恋愛感情と嫉妬がエルシニアだったため、彼女に強烈な印象を与えた。

「だから、あたくしも軽く責任感じるのよ。相談相手くらいには、なって差し上げるわ」
「相談……?」
「誰にも言わずに溜め込むのは良くないわよ?」

 彼女は急にミーナから視線を外したかと思うと、ウェイトレスを呼んだ。紙とペンを用意させる。

 彼女はそれでサラサラと地図を書き始めた。陽歌(ヒラルス・カヌトス)からエンテロコリティカ邸への地図だ。最後に住所を書いて、彼女へ渡す。

「はい、あたくしの家までの地図よ。いつでもおいでになって?」
「あ、ありがとう……。正直に言っていい?」

 地図を受け取ったミーナはためらいがちに質問をした。さっきからエルシニアに質問ばかりしている気がする。

「どうぞ」
「全っ然頭が追いついてない! パンクしそう」
「そうね、今日はここまでにしましょう。また店にも行くわ」

 エルシニアはそう締めくくり、警備隊の面々が置いた代金と伝票を取って立ち上がる。

「ミーナの分はあたくしのおごりで結構よ。愉しませてもらったわぁ」

 続きの気になる小説を見つけた表情で、エルシニアは彼女に遠慮なく言う。ミーナは少しむっとした表情のあと、諦めたように軽くため息をついた。

 しかし彼女はエルシニアに本心を暴かれたおかげで、少し心が軽くなっていることに気づく。一人で終わりのない自問自答を堂々巡りしているより、誰かに話した方が良いのかもしれない。現状は変わらなくとも、言うだけでも精神的負担は減る。

 ミーナはもらった地図を丁寧に折り畳んで、鞄にしまった。
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