魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
 しかしエルシニアは知らなかった。ヴィオルドの抱える闇を。

 彼は今、薬のお陰で悪夢から逃れているが、完全に解放されたわけではない。過去の亡霊を断ち切らない限り、幸せになることを自分で許さないだろう。

 ヴィオルドは元々、一歩引いたところがある。自分はそちら側の人間ではない、一人闇のなかを歩む人間だと、そう思っているのだ。談笑の輪に入っていても、一人だけガラスを隔てて参加している気分である。過去を知っているユリウスやフィルには素で接していたが、他の人には一線をひいていた。数人の例外を除いてだが。

 けれどそんなこと、カフェでミーナ達に再会するまで蚊帳の外だったエルシニアには知るよしもなかった。ただミーナの恋愛を応援しつつ楽しもうと考えていた。彼女が思っている以上に、状況は複雑だ。

「それで、つき合うという目標は決まったわね? 達成するためにどうするか考えていくわよぉ?」
「そうしよう!」

 何も知らない令嬢が無邪気に乙女の背中を押す。浮かれた乙女は足下を見ずに躍り続ける。いかにおぼつかない足どりで踊っているかを、彼女達は気づいていなかった。
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