魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
 ミーナはエルシニアに報告してすぐエンテロコリティカ邸を去り、陽歌(ヒラルス・カヌトス)へ急いだ。ヴィオルドは既に出勤してしまっているかもしれないが、もしできるのならその前に一度会いたかった。

 しかしタイミングは、合わないときには本当に合わないもの。彼女が着いた頃には、もういなくなっていた。ユリウスに呼ばれるのも無視して、ミーナは警備隊本部へ向かう。

 そこでもまた彼女はタイミングの恩恵を受けた。ドルークとフィルによると、朝からずっとヴィオルドを見ていないらしい。

 彼女はフィルを見て、勝手な思い込みで嫉妬していたことを打ち明けて謝る決意をした。今ここで謝らなかったら、きっとなかったことにしてしまうかもしれない。ミーナは自分の感情から逃げず、向き合うと決めたのだ。

 それにこのままフィルを素通りしてヴィオルドに会えても、目を合わせられる気がしない。

「フィル、話があるの……!」

 彼女はフィルを連れて人の少ない建物の陰に入った。彼女は状況がわからないといった表情でミーナに尋ねる。

「どうしたんだい?」
「ごめん、私、フィルに嫉妬の目を向けてたの。いつの間にか、ヴィオのこと好きになってたのよ。フィルは明けぬ夜(ポラル・ノクシア)の被害者だったのね」

 眉を下げて謝罪する。

 フィルは怒ることなくゆっくり口を開いた。

「そうか。うん、あたし、それ応援するよ。……あたしの両親が【明けぬ夜(ポラル・ノクシア)】に殺されてさ。その【明けぬ夜(ポラル・ノクシア)】の関係者がいるって情報をつかんで、この国の警備隊を訪ねたんだ」

 フィルは復讐するためにヴィオルドを見つけ、【明けぬ夜(ポラル・ノクシア)】について探ろうとしていた。その過程で知ったヴィオルドの過去。フィルは幼い頃の彼が一人で【明けぬ夜(ポラル・ノクシア)】を壊滅させたことに驚き、尊敬した。ヴィオルドに憧れた彼女は衛兵に入り、警備隊の見習いに所属することとなる。

「と、これがあたしとヴィオルドの話。そうだな、憧れだよ。あたしのそれは男女のそれじゃあないんだ」

 フィルはそう話を締めくくった。どこか遠くを見ながら過去を語っていた彼女はミーナに向き直り、さらに言葉を紡ぐ。

「さ、ヴィオルドを探すんでしょ? こんなとこで油売ってていいのかい?」
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