魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
 ミーナは意志を込めた表情で、フィルにお礼を述べる。それを受けてフィルは口許を緩めた。

「ありがとう、フィル。行ってくる!」
「話してくれてありがと。きっと見つけて!」

 彼女はフィルに背を向け、外へ駆け出した。

 目の前を走り去っていく彼女を見ながら、ドルークは羨ましそうな笑みを浮かべて小さく呟く。

「……青春だねぇ」

 その声はやわらかな陽光を通り抜ける風に溶け込み消えていった。



 ミーナは王都を風のように駆け抜けて、ヴィオルドを探す。

 このまま彼がどこか遠くに行ってしまいそうな気がして、彼女は焦っていた。今会えなければ、一生会えない気がしてならないのだ。

 ミーナは走る速度を上げる。必ず見つけ出さなければ。

 似ている髪型の男性、同じ制服の王都警備隊、どれも違う。なのに、ヴィオルドだけは見つからない。本当に、もう会えないのだろうか。彼は二度と、関わらせてくれないのだろうか。

 諦めてはダメ、と彼女は自分の胸に言い聞かせる。いつの間にか緩んでいた足の速度も再び上げた。

 楽しそうに談笑しながら街行く人々の間を通り抜け、活気溢れた市場を走り抜け、息を切らせながらヴィオルドを探した。街の喧騒は彼女の耳に届かない。ただ彼に会いたい一心で地面を蹴る。


 噴水のある小さな広場にさしかかったとき、ミーナは噴水の縁に見知った影が座っているのをとらえた。

 鳶色の髪、赤銅色の瞳、整った顔立ち、見慣れた制服。紛れもなくヴィオルドだ。細剣レイピアを横に立てかけ、どこか遠くの、誰も知らない場所を眺めるような目で一人静かに佇んでいた。

 彼女は勇気を出して彼に近づく。また拒否されるかもしれない、完全に嫌われるかもしれない、そんな思いがまとわりつき、足に絡んで歩みを止めさせようとする。誰だって傷つくのは怖い。

 ――けど、決めたんだ。

 たとえ罵られようと、否定されようと、ミーナはヴィオルドの幸せを願いたいのだ。もし彼が消えろと望むのなら、彼の知らないところで支えよう。だからせめて、最後になってもいいからもう一度だけ――。
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