魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
「それで俺はミーナといるのが楽しくなった。あんたに過去を話せたのも、それで去っていくことはないと、同情してくれると無意識に解っていたからなのかもしれない。俺はミーナの優しさにつけこんだみたいなものだ」
「そんなこと……」

 彼女が否定しようとするのを遮って、ヴィオルドは言葉を繋ぐ。

「けどあんたは、俺が足を引っ張っていい人間じゃない。闇に埋もれるのは俺一人で充分だ。だからミーナ、お前はもう――」
「なに寝ぼけたこと言ってるの?」

 最後まで言わせまいと、今度はミーナが遮った。鋭い矢のごとく言葉を放つ。

 ヴィオルドは彼女のためを想って言った言葉を「寝ぼけたこと」と言われてすこしむっとする。

「俺は真剣に……」

 しかしヴィオルドの言葉をさらに遮り、意地の悪い笑みを浮かべたミーナ。彼の前に立ちはだかるように仁王立ちし、敢えていつもの調子で言葉を紡いだ。

「里帰りする前にも言ったけど、私はヴィオをギャフンと言わせるまで貴方の前から消えてやらないわよ!」

 ヴィオルドがはっとした表情になるのを無視して、彼女は休みなく口を動かす。

「それに、私だってヴィオに助けられたじゃない。ジャメルザ邸に駆けつけてくれたこと、そこでいつも通りの言葉をかけてくれたこと、私は忘れないんだから。私だけじゃない。アルベールやフィル、その他の【明けぬ夜(ポラル・ノクシア)】の被害者、さらにはこれから被害に遭うはずだった人達、貴方はその人達みんなを助けたのよ!」

 全てを聞いたヴィオルドは視界が開けていく気がした。開けた先からか細いながらも強い光が射し込み、少しずつ明るさが増していく。彼の見開かれた目には世界の光が映され、いつもより輝いて見えるのではないだろうか。風は彼を祝福するかのように優しく髪を揺らしていた。

 しかし彼は不意にうつむき、瞳に映っていた光は消え去る。

「……でも俺の手は返り血に染まってるんだ。汚れてることに変わりはない」
「みんなの代わりに汚れ役を引き受けてくれたのよね。きっと、誰だって【明けぬ夜(ポラル・ノクシア)】が無くなればいいって思ってたわ」
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