魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
 ドアベルが軽快な音を奏でながら開く。陽歌(ヒラルス・カヌトス)に着いたヴィオルドとフィルをユリウスが出迎えた。

「いらっしゃい」

 二人が空いているテーブルにつくと、普段着のミーナがやってきた。彼女はすっきりとした表情をしながらも、頬に紅薔薇を咲かせている。そんな気恥ずかしそうにしている彼女に向かって、ヴィオルドも恐る恐る口を開いた。

「話がある。昨日の夜とは全く別の……むしろ真逆の話だ」
「そ、そう。……じゃあ二階へ行きましょ」

 短く返事して席を立つ。彼女が階段に向かうのを確認して、ヴィオルドも一歩一歩丁寧に歩き出した。二階で自室の扉を開けたミーナは片手でドアを押さえながら盲一方の手でヴィオルドを中へ入るよう促す。

 室内では開けられた窓を縁取るレースカーテンが風に揺れている。彼女は通りに面したその窓をそっと閉めて、賑やかな町の音を追い出した。

「それで、話ってなに?」

 窓をしめてくるりとヴィオルドに向き直ったミーナが尋ねた。ぶっきらぼうな言い方ではあるが、それは彼女なりの照れ隠しかもしれない。窓を通り抜けた陽光がミーナの後ろから差し込み、彼は彼女をまぶしく感じる。

 覚悟を決めて、ヴィオルドは想いを告げた。一言一言に気持ちを込めて、大切に言葉を紡ぐ。

「ミーナだけじゃない。俺も、ずっとそばにいるよ」

 彼女は目を見開いて息を飲んだ。彼の言葉が終わった瞬間、それは気のせいであったかのように思えてならなかった。

 しかし、それが幻ではないと彼の優しくも真剣な表情が証明していた。ミーナはヴィオルドの双眸(そうぼう)から目を逸らすことができず、目を合わせたまま固まっている。

「昨日の夜あんなこと言っておいて今こんなこと言うのはおかしいってわかってる。虫が良すぎるよな。でも俺がどうしたいかって聞かれて、やっとわかった。ずっと心の奥で、一緒にいたいって願っていたんだ」

 彼の言葉を聞いているうちにゆっくりと落ち着きを取り戻していった。彼女は安心した声音で声を漏らす。

「そっか、そうだったんだぁ」

 ヴィオルドはミーナにゆっくり近づき、そっと抱きしめた。ミーナは一瞬驚いたあと、軽く力を入れて抱きしめ返す。互いの体温に胸を高鳴らせながら二人で佇んでいた。

 窓からふりそそぐ陽光が、二人を祝福するように世界を白く照らしていた。
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