魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
「明日出発するね!」
ミーナがカバンに詰める荷物を抱えながら、パタパタとホールを駆け抜けていく。通りすぎざま、ソファーに座っていたマーテルへ声をかけていった。マーテルは「はーい」と返事をする。向かいに座っていたソロルが驚いたように口を開いた。
「お姉ちゃん、せっかく帰って来たのに。また前みたいに住まないの?」
「うん。友達が待ってるんだ」
「そっか、お姉ちゃん、よかったね!」
今までコンプレックスの塊だったミーナは友達と呼べる人がいなかったため、これは家族にとって大いに喜ばしいことである。他に帰る場所が出来てしまったのを少し寂しく思うが、彼女の成長の場が出来たのは素晴らしいことだ。
「あ! お土産用意しないと!」
思い出したように立ち止まった。ヴィオルドは正直どうでもいいのだが、お世話になっているユリウスや仲良くしてくれているアデライドやレネには渡したい。しばし考えたあと、口を開く。
「中継地で何か買っていこう」
「森で採った花や薬草から作った香水が棚にあるから、持って行ったら?」
「本当? アデルにあげようかな」
マーテルの言葉を聞いて棚に手を伸ばす。ビンから漏れた香りがふわっと彼女を包んだ。森の清涼感と、淑女の高貴さを感じる。魔法使いが調合する薬品はどれも普通のものと違って不思議な効果や、普通では作れないようなものを作れる。
「……ねぇ母さん。魔法薬の本借りてもいい?」
「もちろんよ。今いいのを出してくるわね」
香水を見て、自分も魔法薬に手を出したくなったミーナは尋ねた。今まで魔法と名のつくものから目を背けてきたので、視野に入れたことすらなかった。
返事をしたのちマーテルは書斎へと姿を消した。彼女はマーテルを待ちながら家を出る準備を再開する。持って行く魔法書の数も増え、本格的な杖も近くに立てかけてある。
杖は金属のような、それでいて軽い材質でできており、先端には水晶や宝石がはめ込まれている。水晶は魔法との相性が良い宝石なので、杖に使われることが多い。こだわりのある魔法使いは自分に合った宝石を見つけて使っていたり、稀少で高価な魔法石を使っていたりする。
「本、あったからここに積んでおくわね」
「はーい、ありがとう!」