冷たい熱に甘くとろけて。




「ねえ、らんくん」

「何」

「バレンタインにチョコあげていい?」

私はらんくんの表情を伺った。バレンタインデーはもう明日。

らんくんはいつも我儘だから、ちゃんと聞いておかないと本人の機嫌を損ねてしまうかもしれない。

「いらない」

いつもならこう言われれば「分かったよ」って言って引き下がる私だけど、流石にこの大きなイベントに何もしないのはつらい。

「なんでやなの。チョコ嫌いなの?」

私はそう尋ねた。らんくんは眉間に皺を寄せる。

「チョコは嫌いじゃない。けど、どうせお前料理できねえだろ」

「んむっ」

図星すぎて変な声を出してしまう。だめだめ、こんなところで折れたらきっと一生後悔する。

「じゃあ、私が料理できたら貰ってくれる?」

「…好きにしろ」

本当にどうでも良さそうだ。悲しくはなったけど、断らなかっただけ良い。

「分かった!」

「ん?おい…」

らんくんが何か言おうとしているのを他所に、私はだっと走り始めた。






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