【電子書籍化】いきおくれ令嬢は、クールな騎士様の溺愛に翻弄されています
そんな風にまったりしていた私だったけれど、部屋をノックする音に、のんびりとした時間が中断された。
「どうぞ」
「シェリルお嬢様、失礼致します」
入ってきたのは、四〇歳半ばの黒い燕尾服を着たお父様の執事だ。
音も立てず、上品に一礼した男はお茶をしている私を見ると申し訳なさそうな表情をした。
「何かあったの? ディナード」
「はい、お茶会中に申し訳ありません。シェリルお嬢様」
ディナードはお父様の執事だけれど、私がお仕事をするようになってからは、私の補佐もしてくれている。いわゆる連絡係だ。
そのディナードがきたということは、仕事関係で何かあったということだろう。
全く、ゆっくりする時間もないんだから……。
大好きなお茶会の時間くらいは、好きにさせて欲しい。
心の中でそう思いながらも、私はソファーから腰を上げた。文句は思っていても、口に出すようなことはしない。
「それで?」