【電子書籍化】いきおくれ令嬢は、クールな騎士様の溺愛に翻弄されています
仕事モードになった私に、ディナードはピシッと背筋を伸ばして、持っていた書類を私に差し出した。
「至急確認していただきたい書類です」
受け取った書類には、私が担当している地域の地名が書かれている。
慣れたようにサッと目を通して、何があったのかを把握した。
どうやら、昨日の大雨で、村で育てている果物が傷んでしまったらしい。
色々な果物を育てているこの地域では、この損害は規模によっては結構な痛手となる。
少しくらいならいつも通り、私が買い取ってお菓子作りに使うのだけれど、報告が来るということはそれでは賄えないということだろう。
これは、この報告書だけでは判断できない。
「ディナード、馬車の準備を。それからソフィア」
「はい。準備致します」
直接見に行って判断をしようと、私はふたりに仕事を割り振る。
──ソフィアは私が伝える前に動いたけれど……。
言おうとしていることが分かったみたいだ。