同じだけの愛をかえして
「次、有馬詩織さん」
「は、はい!有馬詩織です。えっと、美術部に入ってます。よろしくお願いします」
最低限の挨拶だけして、勢い良く座る。
ちゃんと挨拶できた。大丈夫、うん。
「緒方優征くん」
「緒方優征。部活は所属してません。よろしくお願いします」
自分の番が終わってホッとしていると、後ろから落ち着いた低めの声が聞こえてきた。
同時に、クラスの女子がざわついているのが聞こえる。
本当に緒方君ってモテるんだなぁ。
「ーーじゃあ、次。森崎誠くん」
順調に新しいクラスメイトの名前と顔を覚える作業をしているうちに、ついに森崎君の番がやってきた。
未練をなくそうと春休みの間努力したけど、やっぱり無理だ。
「森崎誠です!一年の頃と同じクラスの人は引き続きよろしくー。
楽しいこと大好きなんで、学校行事とか一緒に頑張ろう!
部活は天体観測部所属。よろしくお願いしまっす」
目まで笑った、本当に楽しそうな笑顔に、はきはきとした明るい話し方。
諦めようと思うのに、この一瞬でどれだけ森崎君のことを好きになっていたのか思い知らされる。
「これで全員。これからこの35人と先生で頑張りましょう!
今日はこれでおしまいだから、気をつけて帰ってね」
帰りの挨拶をすませると、皆ぞろぞろ帰っていく。
私は手紙に従って残るべきか迷っていた。
だって緒方君に呼び止められる理由なんてないし。