「先生」の壁
 カキーンという快音とともに、白球が飛んでいくのが窓越しに見えた。

「相川さんは、何か悩みある?」

 はっとして目の前の先生の顔を見た。

今は教育相談の真っ最中なのだ。

先生は暑いのかワイシャツの袖をまくり始めた。

その所作がセクシーでじっと見つめてしまう。

先生は、授業は分かりやすいし、どんな生徒にも平等に接するし、小さな変化にも気づいて声をかけてくれる優しい先生だ。

いろんな生徒の悩みや愚痴を聞いている場面をよく見かける。

「悩み…。あると言えばあるような、ないと言えばないような…」

「歯切れの悪い言い方だな。勉強のこと?進路のこと?友達のこと?」

先生のことです。なんて、口が裂けても言えない。

「言ってごらん。先生なんでも聞くよ」

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