現実主義者の恋愛事情・王子を一時預かりします  レイと綺麗
<王子現る>

17時ちょうどにインターホンがなった。
「高梨ですが」

「はーい」
綺麗は、よそゆきの高めの声で返事した。

ドアを開けると、高梨が立っていた。
その後ろには・・・・

綺麗は息を呑んで、
口に手をあてた。

おばちゃんを
ドキドキさせた王子が・・・立っていた。

ジャジャジャジャーーーーーン

ベートーベンの<運命>が、
脳内で鳴り響く。

「キレイさん、お元気ですか?」
王子は優雅に、うれしそうに微笑んだ。

「あのぉ、こんちわ・・です」

綺麗は後ずさりして、
狭い廊下の壁に、ヤモリのように張り付いた。

「すげぇ、いいマンションだよね。
エントランスなんか、
俺のとこより高級だし。」

高梨は不動産屋のごとく、
後ろを振り向いて

「場所もいいし、
2週間くらいならいいですよね。
部屋も・・きれいだし」

それから、
綺麗に視線をやり、
<同意しろ>と圧力をかけて、
首を縦に振った。

「あの、私、高梨、まだ・・」
綺麗はしどろもどろに言ったが

「じゃあ、お邪魔するよ。
レイさん、むさくるしい所ですが
・・どうぞ」

お前んちじゃないぞ!!!

高梨のその言い方に、
綺麗は目をつりあげたが、
次の言葉が出ない。

王子は大きなスーツケースを
持っていたのだ。

「どうぞ・・お茶入れますから」
綺麗は玄関に来客用のスリッパを
そろえて出した。

「失礼します」
高梨は、ズカズカと玄関から
上がったが、

王子はしつけが行き届いているのだろう、靴を脱ぐと、
ひざまずいて、自分の靴を
高梨の靴の隣にそろえた。


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