現実主義者の恋愛事情・王子を一時預かりします  レイと綺麗

リビングの食卓(4人掛け)に、
高梨と王子が並んで座った。

高梨はビジネスマンらしく
王子の方を向いて、すぐに商談に入った。

「どうですか?
桐谷もメイド替わりで使えるし」

綺麗は、足で高梨の足を蹴っ飛ばした。

「あの、あくまでルームシェアと
いうことで、条件もありますし」
そう言って、

綺麗は通帳残高の数字を
思い浮かべて、王子の顔を見た。
王子は心配げな顔をしている。

この人は・・

金で苦労なんかしていないのだろう。
天は2物を与えずというが、
銀のスプーンを何本くわえて生まれてきたのか。

高梨はちょっと得意げに説明をした。

「レイさんは今度、うちの系列の会社で、新しいゲーム音楽の担当
やってもらう事になったんだ。

ここなら、会社に近いし、
スタジオと仕事部屋は
別に借りなくてはならないしね」

高梨は有能だ。
無駄な事はしない。
王子をちゃっかりスカウトしたのだ。

綺麗は紅茶のカップを持つ
王子の手を、見つめてしまった。

指が長く真っすぐ・・
大きい。
ピアニストの手だからだろう。

あの時・・
この手で抱きしめられて・・・

違う・違う・違う・・・
綺麗はこのワードを、何回も脳内にコピペした。

あれは・・
梅酒マジックだったのだ。

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