雪山での一夜から始まるような、始まらないようなお話。
「ごちそうさまでした」

 全部食べ終わると、身体はポカポカ、エネルギーが湧いてきた。
 暇だったのか、とっくに食べ終わっていた進藤は頬杖をつき、ニコニコと私を眺めている。

「さあ、かまくら作りを再開するわよ!」
「はいはい」

 ヤツは素直に立ち上がった。



「じゃあ、入口を作っていくぞ」

 進藤がかまくらの正面に馬蹄形の入口の線を引いて、宣言した。彼と並んでしゃがむと、そっと雪を掻き出していく。
 単純作業は得意だ。
 無心になって、雪をほじくり返す。
 だんだん入口が広がっていき、中に入り込むことができるようになると、私がよつん這いで中に入って掘った雪を進藤が外に出してくれた。

「楽しい」

 思わずつぶやくと、「そうだな。俺は役得」と意味不明のことをつぶやいた。
 進藤はたまによくわからない。昔から邪険にしてもやたらとかまってくるし。

          

< 23 / 95 >

この作品をシェア

pagetop