雪山での一夜から始まるような、始まらないようなお話。
「あっ、む、ぅん……、ん、あんっ!」

 私は昨日に引き続き、進藤に貫かれて、揺さぶられていた。
 ヤツは遠慮なく私の身体を弄りまくったり、ぶちゅっとキスしてきたり、やりたい放題だ。
 ここは旅館の部屋の中。当然、寒くない。なのに、どうしてこんな展開になったんだっけ?
 そう考えるけど、なにもかもどうでもよくなるくらい気持ちよくて喘ぐ。
 進藤は本当になにをやらせても器用だ。ムカつく。


           ☆


 かまくらでぜんざいを食すという憧れイベントをクリアした。
 隣りに進藤がいて窮屈だったけど、ヤツも一緒にかまくらを作ったから、中に入る権利はある。仕方ない。
 ぜんざいは最高だった。

 かまくらを満喫した後、女将さんが早めにお風呂を用意してくれたから、冷え切った身体を浴場で温めた。

「ふぅ〜、極楽極楽〜」

 湯船にもたれると、身体の力が抜けていく。温泉成分が入っているというお湯はとろみがあり、肌に優しい。うっかりすると溶けて流れ出しそうだ。
 五、六人でいっぱいになるような湯船だけど、どうやら客は私たちしかいないようで貸し切り。一人なら十分広い。
 今頃、男風呂では進藤も同じようにお湯に浸かっているはずだ。

 本当ならゆっくり浸かりたいところだけど、猫舌と同じで、熱いお風呂は苦手だ。すぐのぼせてしまう。
 残念に思いながら、さっとあがると、浴衣を着て、帯を結ぶ。

「う〜ん、やっぱり縦結びになっちゃうなぁ」

 蝶々結びが苦手で、いつも蝶々が縦になる。

(お母さんがいたら、正しいやり方を教えてもらえたのかな?)

 考えても仕方がないことをふと思ってしまって、首を振る。
 
(ま、いっか、ここに気にする相手はいない。お父さんに怒られるわけでもないんだから)

 厳格な顔を思い浮かべそうになり、慌てて振り払い、髪の毛を乾かした。
 ショートカットだから、すぐ乾く。

< 25 / 95 >

この作品をシェア

pagetop