雪山での一夜から始まるような、始まらないようなお話。
 積もった雪に足が潜って、歩きにくいことこの上ない。
 あっという間に、雪は本降りになって、どんどん積もってきた。コートのフードを被っているけど、その上にも雪が積もってきて、首を振って振り払う。
 フードのない進藤の頭も白くなっていて、雪を払ってやった。
 風邪引かれても困るしね!

 その仕草に、彼はニコッと笑って答えた。

「お前だったら、あの話を聞いたら月曜を待たずに飛び出していくと思ってたよ。案の定だったな」

(勘違いしないでよ! 私にそんな可愛い笑みを向けても無駄よ!)

 それに行動を読まれていて、腹立たしい。
 本当ならコイツと月曜日からここに出張だった。でも、優位に立ちたい私は速攻ここに来たのだ。

(それで先を越されまいと慌てて来たのね)

 今回はリードできると思ったのに。
 ムカムカしながら、バス停を目指した。

 
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