雪山での一夜から始まるような、始まらないようなお話。
「夏希、見ろ」

 力なく目線をやると、私の中に彼が入ってくるのが見えた。

「〜〜〜〜ッ」

(これは恥ずかしい。なに見せるのよ!)

 そう思うのに、腹が立つことに、気持ちよすぎて、キュンキュン締めつけてしまう。

「夏希、興奮してるのか?」

 柴犬の顔で進藤がうれしそうに言う。

「そ、んなわけ、ないでしょ!」
「でも、すごい締めてるぞ?」

(言わないでよ!)

 自分でもわかるから、悔しいけど言い返せない。
 くくっと笑った進藤がゆっくり腰を動かして、痺れる気持ちよさを味わうとともに、卑猥な光景を見せつけられる。
 目を逸らすのも負けた気がして嫌だけど、顔が熱くなってきて、涙目で進藤を睨んだ。

「夏希、可愛い」

 身体を折り曲げて、進藤がキスをしてきた。
 そのまま舌を絡めだし、腰の動きを大きくする。
 身体中を進藤に埋め尽くされているかのような圧迫感。

「んっ、っん、あ、んっ、んっ、んっ……」

(気持ちいいっ、気持ちいいっ、気持ちいい〜っ!)

 全身を押しつけられて揺さぶられて、私はもうそれしか考えられなくなった。
 
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