雪山での一夜から始まるような、始まらないようなお話。
(どうしよう? なんでうれしいの? 好きだと言われたから? それとも進藤だから?)

 心の中でジタバタ悶えていたら、それをふっ飛ばすようなことを進藤が言ってきた。

「夏希、俺にはお前が要る。夏希が必要だ。いい加減、わかってくれ……」

(要る? 私が必要?)

 切ない瞳で見つめられ、心が爆発する。

(どうして、進藤はそんなに私がほしい言葉を言ってくれるの?)

 目が潤み、喉が詰まって、胸が苦しい。息ができない。

「進藤……」

 まっすぐ私を見る彼の瞳に嘘はなくて、心臓が痛いくらいに早鐘を打った。
 彼に触れたくて仕方なくなって、こんなことにした進藤に責任を取ってもらおうと、その顔を引き寄せ、口づけた。胸の苦しさを訴えるように、何度も進藤にキスをした。

「ん……、夏希……好きだ」

 最初は驚いていた進藤も、それに応えてくれる。
 角度を変えて何度も口づける間に、舌が伸びてきて、すくうように、舌を絡められた。
 擦り合わせるうちにお互いの唾液が溜まって、こくんと呑み込む。
 進藤がうれしそうに笑った。

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