雪山での一夜から始まるような、始まらないようなお話。
 彼の手が私の胸に触れ始め、下腹部がキュンとなる。
 早く私の隙間を埋めてほしくなって、私は着ていたTシャツを脱いだ。

 くっと進藤が喉を鳴らす。
 愛撫を止めて、熱い瞳で私を見下ろした。

「恥ずかしいから、そんなに見ないでよ」

 口を尖らせると、可愛いとつぶやいて、進藤はついばむキスをくれた。
 そして、自分もパジャマを脱ぐと、ゴムを付ける。

「ごめん、もう挿れたい」
「うん」
 
 私も早くくっつきたい。
 自分でパンツを脱ぐ。
 キスだけで、もう濡れているのが恥ずかしくて仕方がない。

「夏希、好きだ」
「うん」

 もう一度、キスをした。
 私の脚を折りたたみ、その中央に自分のものを擦りつけながら、進藤がつぶやく。

「夏希は言ってくれないのか?」

 彼の硬く熱いものが花芽を擦って、腰が跳ねる。
 そうしながら、進藤は私の言葉を待っているようだ。

 でも、進藤のように素直に言葉が出てこない。
 愛おしさは感じる。彼と抱き合いたい。くっつきたい。
 でも、それって、本当に好きってことなのかな?
 今まで人を好きになったことがないからわからない。

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