極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
酒涙雨に誘われた再会
『未亜』
優しく、たまにからかい混じりに彼に呼ばれる名前が、今は熱を孕んだ真剣な声色で囁かれる。
彼が口にするだけで、聞き慣れた自分の名前は、なによりも特別に思えた。
何度か訪れたマンションだがこうして天井を見るのは初めてかもしれない。
わざと彼越しに見える光景に意識を持っていくのは、この状況に頭がついていかないからだ。私を真っすぐに見下ろしてくる彼と目が合わせられない。
『嫌か?』
不安そうに尋ねられ、頭を撫でられる。具体的になにをと言われなくても察せられるくらいの知識はあった。ただ、経験がないだけで。
私は小さく首を横に振る。続けておそるおそる目を合わせ、ぎこちなく彼の頬に手を伸ばした。
『それよりも……体冷えてない? 大丈夫?』
私の問いかけに彼は目を見開き、ややあって噴き出す。
『未亜が気にしているのはそこか』
『だって、私よりも濡れ』
最後まで言わせてもらえず唇が重ねられる。きつく抱きしめられ体勢が体勢だからか心臓が早鐘を打つ。
ましてや今は彼に借りたシャツを一枚着ているだけなので、温もりがいつもより直接的に伝わり、戸惑いが自分の中で広がっていく。嫌な気持ちはまったくないのに、どうしたらいいのかわからない。
甘くて長い口づけが終わり、彼は余裕たっぷりに微笑んだ。
『心配なら未亜が温めてくれないか』
そう言ってあらわになっている首筋にキスを落とされ、声があがる。
『あっ』
初めての感覚に体が強張る。すると不意に彼が顔を上げ、額をこつんと重ねてきた。
『愛している。未亜が欲しいんだ』
彼の声に、瞳に、表情にすべてを奪われる。
『うん……私も』
それ以上はキスで唇を塞がれ言えなかった。外は雨が降っていて静けさに包まれている。
なにもかもが初めてだった。あんなふうに心の底から誰かを愛したのも。
でも、きっと彼とはもう二度と会うことはない。
最後に見た彼はどんな顔をしていた?
優しく、たまにからかい混じりに彼に呼ばれる名前が、今は熱を孕んだ真剣な声色で囁かれる。
彼が口にするだけで、聞き慣れた自分の名前は、なによりも特別に思えた。
何度か訪れたマンションだがこうして天井を見るのは初めてかもしれない。
わざと彼越しに見える光景に意識を持っていくのは、この状況に頭がついていかないからだ。私を真っすぐに見下ろしてくる彼と目が合わせられない。
『嫌か?』
不安そうに尋ねられ、頭を撫でられる。具体的になにをと言われなくても察せられるくらいの知識はあった。ただ、経験がないだけで。
私は小さく首を横に振る。続けておそるおそる目を合わせ、ぎこちなく彼の頬に手を伸ばした。
『それよりも……体冷えてない? 大丈夫?』
私の問いかけに彼は目を見開き、ややあって噴き出す。
『未亜が気にしているのはそこか』
『だって、私よりも濡れ』
最後まで言わせてもらえず唇が重ねられる。きつく抱きしめられ体勢が体勢だからか心臓が早鐘を打つ。
ましてや今は彼に借りたシャツを一枚着ているだけなので、温もりがいつもより直接的に伝わり、戸惑いが自分の中で広がっていく。嫌な気持ちはまったくないのに、どうしたらいいのかわからない。
甘くて長い口づけが終わり、彼は余裕たっぷりに微笑んだ。
『心配なら未亜が温めてくれないか』
そう言ってあらわになっている首筋にキスを落とされ、声があがる。
『あっ』
初めての感覚に体が強張る。すると不意に彼が顔を上げ、額をこつんと重ねてきた。
『愛している。未亜が欲しいんだ』
彼の声に、瞳に、表情にすべてを奪われる。
『うん……私も』
それ以上はキスで唇を塞がれ言えなかった。外は雨が降っていて静けさに包まれている。
なにもかもが初めてだった。あんなふうに心の底から誰かを愛したのも。
でも、きっと彼とはもう二度と会うことはない。
最後に見た彼はどんな顔をしていた?
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