極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
午後五時前、約束の時間に病院の駐車場に車を停め行き慣れた足取りで病室を目指す。
ドアを三回ノックして中からの返事を待たずにドアを開けた。
父はいつも通り、ベッドで上半身起こした姿勢で不機嫌な顔をしているのだろう。その傍らに秘書の正田さんがいるのが定番だが、今日はいないかもしれない。
「お父さん、調子はどう?」
定番の台詞を口にしながら自分の予想は半分当たっていたと確認する。父の体勢も表情も相変わらずで、娘の私を見ても笑顔のひとつない。
ここで茉奈が一緒だと幾分か和らぐのだけれど。そして正田さんは父のそばにいなかった。
ところがもう半分、大きく外れたのは、父はひとりではなくそばには誰かがいた。背が高く、すらりとした体形のスーツを着た男性がひとり。
おそらく外国製の高級スーツだがまったく嫌味になっておらず、隙なく着こなしている。
父につられ、ゆっくりと彼がこちらを向いた瞬間、目が合った私は息を呑んだ。呼吸や瞬きさえも忘れてその場に硬直する。
「……なん、で」
乾いた声で小さく漏らす。
忘れもしない。最後に会ったのは二年以上前だが、彼を思い出さない日は一度もなかった。彼は高野……正確には朝霧衛士。
父が敵対視しているアメリカに拠点を置く電気製品メーカー、ラグエルジャパンの社長令息、いわば次期社長だ。
印象的な切れ長の目は涼しげで目力があり、端整な顔立ちと相まって一度見たら忘れられない。
軽くワックスで整えている黒髪は艶があって年齢は三十二歳だが、それ以上の貫禄を感じるのは、彼の立場か経歴がそうさせているのか。
ライバル関係にある会社の人間がどうしてここにいるの?
ドアを三回ノックして中からの返事を待たずにドアを開けた。
父はいつも通り、ベッドで上半身起こした姿勢で不機嫌な顔をしているのだろう。その傍らに秘書の正田さんがいるのが定番だが、今日はいないかもしれない。
「お父さん、調子はどう?」
定番の台詞を口にしながら自分の予想は半分当たっていたと確認する。父の体勢も表情も相変わらずで、娘の私を見ても笑顔のひとつない。
ここで茉奈が一緒だと幾分か和らぐのだけれど。そして正田さんは父のそばにいなかった。
ところがもう半分、大きく外れたのは、父はひとりではなくそばには誰かがいた。背が高く、すらりとした体形のスーツを着た男性がひとり。
おそらく外国製の高級スーツだがまったく嫌味になっておらず、隙なく着こなしている。
父につられ、ゆっくりと彼がこちらを向いた瞬間、目が合った私は息を呑んだ。呼吸や瞬きさえも忘れてその場に硬直する。
「……なん、で」
乾いた声で小さく漏らす。
忘れもしない。最後に会ったのは二年以上前だが、彼を思い出さない日は一度もなかった。彼は高野……正確には朝霧衛士。
父が敵対視しているアメリカに拠点を置く電気製品メーカー、ラグエルジャパンの社長令息、いわば次期社長だ。
印象的な切れ長の目は涼しげで目力があり、端整な顔立ちと相まって一度見たら忘れられない。
軽くワックスで整えている黒髪は艶があって年齢は三十二歳だが、それ以上の貫禄を感じるのは、彼の立場か経歴がそうさせているのか。
ライバル関係にある会社の人間がどうしてここにいるの?