極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
「茉奈は俺が着替えさせておくから、未亜は自分の支度をしておいで」

「ありがとう、お願い」

 衛士に茉奈を託して私は化粧と髪形を仕上げる。といっても元々ナチュラルメイク派なので、あまり気合いが入った化粧はできない。髪も軽くまとめ上げるのが精いっぱいだ。

 それにしても大人がふたりいるだけでこんなに楽になるなんて。ゆっくり化粧台の前に立つのは久しぶりだった。

 もちろん衛士が率先して茉奈をよく見てくれるのもある。リビングからは衛士と茉奈の楽しそうな声が響いていて、それを聞きながら鏡の前で最後のチェックをする。

 どこもおかしくないよね?

 茉奈の準備は先にしているので、これで出発できる。そこである考えが私の頭をよぎった。

「衛士」

 リビングにいる衛士に声をかける。茉奈は衛士が着替えさせたらしく、ややセミフォーマルなデザインの淡いピンク色のワンピースをきちんと着ていた。その姿を確認し質問を続ける。

「婚約指輪はつけた方がいい?」

 私の問いかけに、ソファに座って茉奈に絵本を読んでいた衛士が目を瞬かせた。

「やっぱり初めてご両親にご挨拶に行くのに変かな?」

 まだ結婚を認めたわけじゃないと気分を害されても申し訳ないし、反対に衛士に対して結婚するのに指輪も贈っていないのかと思われても困る。

 正しい順番がわからない。そもそも先に子どもがいる時点で順序もなにもないんだけれど。
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