極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
「え、衛士が言ったからでしょ。本当に脱がしてほしいの?」

 訝しげに尋ねると衛士はこつんと額を重ねてきた。

「もちろん。いつも俺が脱がすばかりだったから。脱がす未亜も見てみたくなったんだ」

「なっ」

 それは、やはり物理的に脱がしてほしいという意味ではないのでは?

 その証拠に、唖然とする私の前で衛士はさっさとシャツを脱ぎ捨てる。真正面から抱きしめられ、直に肌同士が触れ合い鼓動が速くなった。

「も、もう温まったから出よう」

 逃げ出したい衝動に駆られ切り出したが、衛士は私を抱きしめる力を緩めず、片方の手でゆるゆると私の胸に触れ始めた。

「あっ」

「その前に未亜を存分に気持ちよくしたい」

 耳元で囁かれ、そのままねっとりと耳輪を舐められる。電流が走ったみたいに体が痺れ、思わず声が漏れた。

「や、だ。もう出る」

 衛士の手を離そうと手首を掴んで力を入れるがびくともしない。それどころか手に指を絡めて握られ、余計に彼から逃げられなくなる。

「この状況で、ここで終われない」

 切羽詰まった声で訴えかけられ見ると、彼の表情は切なげで瞳は情欲の色で滲んでいる。その目に真っ直ぐに見つめられ、私は金縛りなにあったように動けなくなった。

「未亜は? 本気でやめてほしいのか?」

 頬を撫でながらやるせなさそうに尋ねられ、私は目線を落とした。

「だって……」

 それ以上、続けられない。ここで衛士を受け入れられないのは、物理的な問題じゃない。私の心の奥底にある感情が歯止めをかけている。それをどう言葉で表していいのかしばらく悩んだ。
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