極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
「正直、自分の子どもがこんなに可愛いものだと思いもしなかった」

 それは私も同じだ。血を分けた茉奈の存在が、こんなにも愛しいとは想像もできなかった。

 ふと衛士と目が合うと彼は穏やかに微笑む。

「未亜との娘だからな」

 見惚れていると、ゆるやかに顔を近づけられ唇が重ねられる。優しい口づけに心が満たされていき、好きという気持ちが溢れだしそうだ。

「そうだね。大好きな相手との子どもだもん」

 目を細めて同意したら、再び衛士に素早く口づけられる。

 今度はどこか余裕のないキスで、唇の間を舌でなぞられたかと思うと衛士の舌はあっさりと私の口内に侵入し、巧みに翻弄しては快楽を与えていく。

「んっ……うん」

 応えようとするけれど、漏れる声もすべて奪われそうな口づけになにも考えられなくなる。バスルームでの余韻も合わさり、燻っていた熱がじわじわと体中に広がりはじめていった。
 
 ところがキスをしながら衛士の手が私のシャツのボタンをはずしにかかっていることに気づき、わずかに動揺する。彼の手を止めようとしたら口づけは中断された。

「まだ暑いなら未亜も脱いだらいい」

 熱っぽく伝えられるが、どう考えても純粋な気遣いだけで言っているわけではなさそうだ

「待っ、て」

「待たない」

 私のか細い制止の声を振り切り、衛士は手を止めないまま私の首筋に口づけた。瞬間的に鳥肌が立ち、体の力が抜ける。

 その隙に手早くシャツを脱がされ、強く抱きしめられた。肌同士が触れ合う心地よさに安堵する間もなく、彼に倒されベッドに背中を預ける形になる。
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