極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
 彼が私に合わせる形で付き合いは進み、今まで男女交際をしたことがない私にとって衛士は、なにもかも初めての相手だった。

 キスもそれ以上のことも。逆に衛士はそれなりに経験があるのが伝わってきて、彼にとって物足りないと思わせたのは一度や二度ではない。

 でも惹かれていく気持ちが止められず、私は会うたびに衛士を好きになっていた。

 そして付き合って半年になる頃、衛士は思いつめた顔をよくするようになっていた。話しかけても上の空なことが多々あり、心配になる。

 年度末で仕事が忙しいのか、どこか体調が悪いのかと尋ねても彼は曖昧に笑って否定する。不安になる一方で、私も彼との交際に複雑な思いを抱いていた。

 父は相変わらず私の結婚を急かし、様々な相手を考えていた。

 実家暮らしの私は、衛士のマンションによく泊まりに行ったりしていたが、忙しい父は私が誰かと付き合っているとは思っていなかっただろう。

 父からお見合いの話を聞くのが憂鬱だった。私が想うのは衛士だけだったから。とはいえ彼との交際を父に打ち明けるか悩む。反対されるのは目に見えていた。

 それに私たちは付き合ってはいるものの結婚までは考えていない。正確には、私たちの間に結婚に関する話題はほぼなかった。それが不自然なことなのかどうかもわからない。

 そもそも結婚の話っていつ出るものなんだろう。衛士はどう考えているのかな。過去に付き合った相手とは?

 聞きたいのに、自分から切り出す勇気がない。でも、結婚するしないに関わらず私の気持ちは決まっていた。
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