極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
 いい加減、父に彼との交際を打ち明けるか、衛士に私との未来について切り出すべきのかな?

 三月も半ばに差し掛かる頃、衛士と会う約束をしている時間の前に、久しぶりに父に話があると呼びだされた。

『未亜、お前に紹介したい男性がいる』

 書斎を訪れると予想通りの内容が父から告げられ、私は決意する。

『お父さん。私、お見合いはしません。できれば結婚は……その、好きな人としたいの』

 さすがに衛士との交際までは言えなかったが、自分の思いの丈をぶつける。それに彼と付き合っている以上、他の男性とお見合いなど不義理な真似はできないし、したくない。

 父は眉間の皺を深くしてため息をついた。

『馬鹿を言うな。お前が杉井電産の社長の娘だと知って近づく邪な男も多い。お前みたいな世間知らずは、簡単に騙される』

『そんな。お父さんが紹介する人だって私を杉井電産の社長の娘としか見ていないじゃない!』

 衛士は違う。衛士だけは、私を……。

 父の机に近づきながら私は珍しくして父に反論する。

『私は、肩書きとか関係なく私自身を見て好きになってくれる人と』

 そこで私は目を見開いた。途中で言葉を失うほどの衝撃を受ける。

 父の書斎机の上には業界の専門雑誌が開かれて置かれていた。そのページではライバル会社であるラグエルの特集記事が組まれている。父もチェックしていたのだろう。

 なん……で?

 そこにはラグエルの次世代の若き担い手として社長の息子が写真付きで紹介されていた。

 雰囲気は違うが、間違いない。私と付き合っている衛士が、どういうわけかラグエルジャパンの次期社長“朝霧衛士”として載っていた。
< 25 / 186 >

この作品をシェア

pagetop