極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
 早めに仕事を切り上げ、保育園に茉奈を迎えに行ってから叔父夫婦の家に向かう。インターホンを押すと中からとびきりの笑顔で女性が出てきた。

「はーい、未亜ちゃん、茉奈ちゃん。待ってたわよ」

 叔父の妻である陽子さんだ。私はバトンを渡すように茉奈を彼女に預ける。茉奈も慣れているので嫌な顔ひとつせず陽子さんに抱っこされた。

「陽子さん、いつもごめんなさい」
「謝らないで。私も(あつし)さんも未亜ちゃんや茉奈ちゃんが本当に可愛いの。もう実の娘と孫くらいに思っているんだから。お父さんとゆっくり話してきてね」

 陽子さんの明るさに私は何度も助けられてきた。仕事で保育園のお迎えが遅くなりそうなときには代わりに行ってくれたり、こうして茉奈を預かってもらったり、いつも支えられている。

 すぐそばに私たちの住むアパートがあるけれど、疲れが抜けないときはここで茉奈とご飯を頂いて泊まることもあった。

 お母さんが生きていたら、こんな感じで甘えられたのかな。血の繋がりのない私たちにここまでしてくれる陽子さんには本当に感謝してもしきれない。

 今日も病院に行っている間、茉奈を見てもらう段取りになっていた。

 いつもなら顔を見せるがてら茉奈も父の元へ連れていくのだが、今日はなにか特別な話があるようだし、動き回る茉奈を連れていくとどうしても落ち着かない。

 茉奈と陽子さんに別れの挨拶をして、私は病院へ急ぐ。

 結婚について急かされるのかな? それともやっぱり本社に戻れとかそういう話?
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