君と奏でるトロイメライ

店舗の運営とピアノ講師はシフト制によって勤務時間が決められている。

午前中から昼過ぎまで楽器店の店員として働いた春花は、午後は併設されているピアノ教室の講師を勤める。ピアノのレッスンは主に夕方からが主で、幼児から年配まで年齢層は様々だ。

「はるかせんせい、こんにちは」

「こんにちは、ももちゃん。お家で練習してきたかな?」

「もも、できるようになったよ。見ててね」

保育園児のももは小さな手を鍵盤に乗せ、ぎこちない指でドレミと音を出す。

「うん、上手になってる」

「やったぁー!」

ももの微笑ましい姿は春花を初心に返す。今ではスラスラと弾けるようになったピアノも、かつては春花だってももと同じスタートラインだったのだ。

「ピアノ弾きたいなぁ」

「せんせい、なあに?」

「ううん、ももちゃん、今日も頑張ってピアノ弾こうね」

「うん!」

春花はその後5つのレッスンこなし、ようやく本日の勤務を終えたのだった。

「は~疲れたぁ」

思わず声が出たことに春花は自分自身苦笑いした。今日は午前中から勤務があり、レッスンもたくさん入っていたハードな一日だった。早く帰ってゆっくりお風呂にでも浸かりたい。そんなことを考えながら帰宅していると、突然携帯電話が鳴った。

表示名を見て、春花は無意識に嫌そうな顔をした。

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