君と奏でるトロイメライ
遊戯室で突然ピアノコンサートが始まった。
「今日はピアニストの桐谷静さんが来てくれましたよ。みんなの知っている曲はあるかな?」
園長先生が説明すると、最初キョトンとしていた園児達もあれやこれやと歓声がわいた。
ザワザワとした、今から何が始まるのだろうと期待に満ち溢れた園児達にプレッシャーを感じながら、静は前へ出る。
ポロロン……と演奏が始まると、園児達は耳を澄ますようにしんとなった。
「これしってる!」
「あー!きいたことあるー!」
演奏が進むにつれ、メロディに合わせて歌い出す子、リクエストする子も現れ、楽しそうな声が遊戯室にこだまする。
春花はどうしたらいいかわからずぼんやりと静の演奏を聴いていた。
(どうして静がここにいるの?どうして戻ってきたの?)
ぐるぐる回る思考に考えが追い付かない。
園児たちに囲まれて楽しそうにピアノを弾く静。タキシードを着ていなくても髪をきっちりセットしていなくても、そこに存在しているだけで眩しく輝いている。