あやかし戦記 怪物の城

アレンが振り返り、注意をした時にはもう遅かった。団員の何人かが金貨を手に持ち、それを自分の制服のポケットなどに入れている。

チェルシーに叱って貰おうとアレンが思った刹那、「見ていたぞ、お前たち。盗人には罰を与えなくては！」と低い怒りを含んだ声が響く。

「な、何！？」

「誰だ！？」

全員が混乱する中、地下室の明かりが一瞬で消える。そして滝が落ちるような音が聞こえたかと思うと、部屋が一瞬で水で溢れていく。

「ッ！？」

天井にまで水が浸かり、息ができなくなっていく。真っ暗なため、自分がどこにいて出口がどこにあるのか全くわからない。

パニックになりかけたアレンの耳に、「キャハハハハハハ！！」と耳障りな女性のような笑い声が聞こえてくる。水の中で人間は笑い声を上げられない。妖だとすぐに気付く。だが、その妖がどこにいるのかが全くわからない。

刹那、「ぎゃあぁぁぁぁ！！」と今度は痛がる声がアレンの耳に響く。すると水が一気になくなっていき、アレンはびしょ濡れのまま床に倒れ込み、激しく咳き込む。