あやかし戦記 怪物の城
イヅナはゆっくりとツヤに近付く。普段の通夜ならば、すぐにイヅナの気配に気付くのだが、今日は全く振り返らない。

「ツヤさん」

イヅナが声をかけ、そっとその肩に触れた瞬間、ツヤが恐ろしい形相で振り返り、イヅナの手を痛いほどに掴む。骨が軋んで折れてしまうかと思うほどの痛みだ。

「ツヤさん!痛い!!」

悲鳴を上げるようにイヅナが言うと、ツヤはハッといつもの表情に戻り、手を離してくれた。

「イヅナ、すまない。痛かっただろう?折れてはいないと思うが……。何故、起きてきた?まだ交代の時間ではないぞ」

ツヤは謝りつつ、眠っていないイヅナを睨む。イヅナは素直に「ツヤさんと話したかったからです」と答えた。

「ツヤさん、お父さんのことを考えていたんじゃないですか?お姉さんの仇を取ろうって……」

「……気付いていたか」

フッ、とツヤは笑いながら焚き火の方に目を向ける。燃え盛る炎がユラユラと揺れ、時折真っ赤な火の粉が上がっていた。
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