あやかし戦記 怪物の城
「レオナード、ヴィンセント、アレンさん、チターゼさん……」

四人が真剣な目でイヅナを見つめている。そして、レオナードがイヅナの華奢な手を握った。その手は小刻みに震えている。

「俺さ、ぶっちゃけ自分が死ぬことは怖くねぇ。アレス騎士団として任務たくさんこなしてたら、自然と戦って死ぬことって名誉なんだって思ってた。……でも、イヅナやヴィンセントたちが死ぬのだけは嫌だ。だから死ぬなよ」

「死なない。レオナードたちが生きている限り、死ねないわ」

生きて帰れる保証はどこにもない。それでも、そんな言葉が口から溢れてくる。

レオナードが少し笑って離れると、今度はヴィンセントが抱き付いてきた。その手つきはまるで、ガラス細工に触れるかのように優しい。

「僕ね、イヅナのことが好きだよ。人を喰う危険な妖と共存したいって考えられる誰よりも優しいイヅナが、大好きなんだ。いっぱい出かけたいところがあるから、一緒に見たい景色があるから、だから生きて帰ろうね」

「……うん。私も、ヴィンセントのことが大好きよ。みんなとたくさん出かけたい」
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