i -アイ-愛-
「待てって!春姫!」


「きゃっ!ごめんなさいっごめんなさいっ」


突然後ろから腕を掴まれ、反射的に顔をガードする。


「ちげぇ、俺は琥羽だ。近くまで送るから乗れよ」


恐る恐るガードをやめると、バイクを指差す琥羽がいた。


わざわざ追いかけてきてくれたんだ。


ありがたいけど、でも誘いには乗れない。


「真翔に見られたら何されるか分かんないから大丈夫。ごめんね、急いでるからもう行くね」


「連絡先だけ教えとくから。なんかあったらいつでも連絡してこい」


琥羽はそう言って半ば強引に連絡先を交換してくれた。


「ありがとう…」


「じゃあな。気をつけて。近道はそこの角を左だから」


「うん…じゃあね…」


本当はずっと琥羽や優羽さんと一緒にいたい。


家になんて帰りたくない。


でも、私の居場所はあそこしかないから。


どんなに苦しくても帰るしかないんだ。


私に逃げ場なんてないんだから。
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