i -アイ-愛-
エプロンをとってそそくさとスタッフルームに消えていく中間美華(なかまみか)ちゃんに、何も言えなかった。


今日の掃除当番は美華ちゃんなのに。


そもそも、私の方が先輩なのに。


真翔…怒るだろうな…。


掃除をしてたら、真翔に伝えた時刻より30分は遅くなってしまう。


窓の外に目をやると、何をするでもなくジっとこっちを見ている真翔が見える。


真翔の束縛は異常だ。


最初は1日の予定を聞いてくるだけだったのが、スマホを見られるようになり、真翔以外の連絡先を消され、位置情報アプリまで入れられてしまった。


バイト中に男性と会話することも禁止され、もし会話したのがバレたら殴られる。


喧嘩慣れしている真翔からの暴行は本当に怖い。


死ぬんじゃないかって毎回思う。


でも…。


真翔はきっと寂しいんだ。


私と同じで、愛されたことがないから。


だから寂しくなって、離れていってほしくなくて、強引に繋ぎ止めようとしてしまう。


私には気持ちがわかる。
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