i -アイ-愛-


掃除を終え、急いで店の外に出ると、案の定真翔は不機嫌だった。


「ご…ごめんね…。掃除押し付けられちゃって…」


「そう。なんで?」


「え…?」


真翔の真っ黒の目がジロリと私を睨む。


「なんで押しつけられて断らなかったの?」


「えっと…そういうの…苦手で……」


揉めるくらいなら自分がやればいい。


そう思ってしまう。


「断るのが苦手だからって、俺のこと待たせたんだ?」


「……そういうわけじゃ…」


そもそも私は待っててくれなんて頼んでない。


真翔が勝手に待ってるだけなのに…。


「何?その顔。文句があるなら言えよ」


ガシッと頬を掴まれて、息がつまりそうになる。


「文句なんてないよ…。ね、もう早く帰ろう…?」
< 6 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop