i -アイ-愛-
真翔は乱雑に私の頬から手を放し、バイクに跨がった。


「俺は倉庫行くから先帰ってて。家から出るなよ」


…じゃあ待ち伏せしないでよ…。


そう言いたいのをグッとこらえて頷くと、真翔は満足げに口角を上げた。


「あ…でも…買い物に行ってもいい…?」


「何の」


視線が冷たくて、身体が縮こまる。


真翔の目が怖い。


でも、合わせないと怒るから合わせないほうがもっと怖い。


「今日のご飯の食材がないから…」


「あっそ。男の店員のレジには並ぶなよ」


「わかってるよ…」


いつから真翔はこうなっちゃったんだろう。


考えてもしかたないけど、考えずにはいられない。
 

真翔に別れを告げ、早足にスーパーに向かう。


真翔が倉庫に行く日は夕飯がいらない日。


好きなものを作ることができる。
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