路地裏Blue Night.




「…じゃあ…キスでもしておこうか」


「………え!?!?」



さすがに顔を上げた。

背中は押さえられちゃってるから離れられないけど、見下ろしてくる目が想像していたより遥かに鋭くて。


……キス……?

キスって、言った……よね……?



「ここも、僕が盗っていい?」


「んむっ」



繊細ながらも骨ばんだ綺麗な指先が、唇の形をなぞるように触れてくる。

その動きがなんとも妖艶に映って、そんな虜になってしまったみたいに目が離せなかった。


”狙った獲物は離さない“

そう伝えてくるような視線に、ぞくりと背筋が立つ感覚。



「僕は射止めたなら一生だから」


「…いっ、しょう…?」


「僕は自分のものを奪わせやしない。どんな相手だろうと、誰にも渡さないよ」



銃弾のような矢が、戸惑う野良猫を撃ち抜こうとしてくる。

一度ターゲットとなったなら逃げ場なんかない。

どんなに逃げ惑っても、けれど捕まったならそれはそれで最後まで守り抜いてくれる。


そう思わせてくる彼はすごく不思議な人だ。



「ごめん、からかいすぎたね。…明日も学校、はやく寝ちゃいな」



元の笑顔に戻った。

そりゃもう適度な力加減で、引き寄せられながらの頭ぽんぽんしてくれるけど…。



「……」



寝れるわけ……ないよね!?!?

こんなの寝れる方がおかしいってんだよぉぉぅぅおうおう…!!!



< 105 / 282 >

この作品をシェア

pagetop