路地裏Blue Night.




今度はぐいっと。

どの角度から見てもハグしちゃってるけど、周りはヒューヒューなんてからかっては音楽に乗せて盛り上がるだけ。


私の身体をすっぽりと腕の中に隠すように、さっちゃんはきつく抱きしめてきた。



「さっちゃん…、」


「…まだもう少し」



やっぱりちがう……今までと全然ちがう……。

なにが違うのかと聞かれれば、私の胸の高鳴り様だった。


ドコドコドコドコ小刻みに叩かれていたのが今まで。

でも今は、ドキンッ、ドキンッと、それはもう大きくなる太鼓。



「ん、さっちゃん…くるしい、」


「苦しい?我慢して」


「…え、」



ここは少し緩めてくれるところじゃないの…!なんか余計きつくなっちゃったんだけども…!

はあっと耳元からの熱い吐息が鼓膜をふるわせて、脳に一直線だ。



「ひゃっ、」



と、思わず肩がピクンと跳ねてしまった。


それを聞いたからか、それとも追っ手が近づいて来たからか。

もっともっと引き寄せるように力を込められて、隙間なんかないくらいに抱きしめられる。


こんなにもうるさい場所なのに……私の心臓の音しか聞こえないの、なんでぇ…?



「…盗られた方は僕…かな」



はい、聞こえました。

そりゃもうばっちりと。



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