路地裏Blue Night.
「なにも…されてないよ」
「じゃあ僕の顔ちゃんとみて言える?」
「っ、」
首にまわった腕、一息一息がひびく耳。
このまま顔を向けてしまったらくっついちゃうんじゃないかって思うくらい、密着してる。
さっちゃんとの身長差に安心するのに、それ以上つよく心臓がぎゅうっと掴まれてしまったみたいで。
ズキンちゃんに打ち勝ったドキンちゃん、到来。
こうして背中から抱きしめられることが救いのようで、逃げ場もなくて。
「ねぇ、ミオ」
「っ…、おわっ…ぁ、」
ずるっ。
足にちからが入らなくなって、冷蔵庫の前にぺたりと座り込んでしまった。
「さっちゃん、まだ食材…入れなくちゃ、」
ガサゴソと誤魔化すように床に置かれたビニール袋を漁って、冷凍室を開けて。
座ったままでも必死に何かできることを探した。
「ミオ、」
「わっ、」
冷凍室がパタンと閉じられた。
これはもう何も出来ない、顔を上げてしまえばしゃがみこむさっちゃんが見えてしまうから、それもできない。
「っ、さっ、ちゃん、」