路地裏Blue Night.
「さっちゃんのバカっ!さっちゃんにとっては慣れたものかもしれないけどっ、
女の子にとってファーストキスってのは命の次に大切なものなんだから…っ!!」
いいか覚えとけ!!
私の場合は自分の命→ファーストキス→家族なの!!
お母さん出ていっちゃったしお父さん逮捕だから、ファーストキスの方がどちらかというと大事なんだから……!!
「…だから僕は今日、」
「もういいから…!聞きたくないから!聞いてないよそんなのは……!!」
「聞いてミオ。僕はあの女とは今日、」
だから聞きたくないってばぁっ!!
もーー!!なんなのさっちゃん…!!
とりあえず耳をふさぐ。
ここはもう物理的に聞かないようにするしか方法がない。
「ミオ!」
「ぅわっ…!」
ぐいっと無理矢理ほぐされてしまって、私の力ない抵抗だって無意味。
そんなさっちゃんの顔が私に近づいてきてるような。
ライトブラウンの明るい前髪から覗いた目が、バチッと私を捕らえては離さない。
それはすごく男の子で、掴まれた手だってびくともしない。
「わ、…まってさっちゃ…、」
「皐月」
「っ…、」
もういいや───なんて気持ちが現れる顔で、私の唇に合わさりそうな瞬間。
ピリリリリリリーーーー。
はりつめていた空気が1本の電話によって止まった。