路地裏Blue Night.
噛み合わない。
こいつは頭が良くて要領も良くて、基本は穏和的だから、今までだってこんなこと無かったのに。
この男のおかげでα9は若者に慕われて警察にも慕われて、ヤクザから狙われている誰かさんに頼られるようになって。
それなのに皐月は譲らなかった。
それどころか俺を見て、嬉しそうに微笑む。
『侑李は僕の代わりになれるけど、僕は侑李の代わりにはなれないからさ。
だから僕に万が一なにかあっても、そこは昔から安心してるんだよ』
『───…やっぱり、こんなのやめた方がいい』
『…え…?』
俺たちは街のお助けマンだ。
自分から闇金に手を出して馬鹿を見た男をすくう組織じゃない。
お助けマンでいいだろ、ずっと。
万引き犯を捕まえたり、逃げたひったくり犯を追いかけたり、痴漢された人を助けたり。
そうやって平和な中でヒーローとして活動してたんだから。
『やめよう。わざわざ自分の身の危険を承知で行く任務なんか、…そんなのアホだろ』
怖かったんだ。
そんな楽しい時間が、こんなヤクザなんかと絡んだだけで壊されるんじゃないかって。
俺は怖かった。